休暇が終わると目前にせまっていたのは卒業試験のシーズンで、わたしは準備にやっきになった。ハイネのもとには休暇明けすぐに向った。案の定彼は怒っていて、蹴っ飛ばしてごめんなさい、そう言うと、そういうことじゃねえよ、と彼にしては珍しく仏頂面でなじられた。しばらく沈黙が続いたが、仕方ないなというようにため息を吐いた。ハイネはそういう奴だ。長時間人を憎むことができない。この性格は彼の身をいつか滅ぼすだろうなというのはわたしの持論で、この時ほどそれを実感したことはなかったけど、少なくとも今この瞬間彼はわたしを救っていた。そして多分、他にも多くの人を救っている。
卒業試験が終わってわたしたちは軍人になった。ホーキンス隊というプラントから離れた艦のチームに配属になった。その準備期間という名目で一週間の休暇が割り当てられたけれど、家には帰らなかった。これからも帰らないだろう。自分のプライベートアドレスを変え、ギルのアドレスを拒否するように設定したら、二度とメールは届かなくなった。
自由になったと思った。誰にも伝えなかったから、きっと誰も知らない。